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和田義行のインプラント論文Review④

インプラントコラム / 2014.05.26

意図的歯牙再植術を行った大きなのう胞性病変の2症例、

中出修、斉藤正人、蔵口潤、和田義行、後藤邦彦、星佳恵、神田昌巳、松沢耕介、賀来亨、

日本口腔インプラント学会誌、第7巻、第1号、平成6年3月、19-25.

この論文は、私が勤務していた時の20年前の論文です。主な執筆者は、歯科大学の口腔病理学口座の先生たちでした。私が臨床所見を担当しました。難治性の根管で、大きな嚢胞を根尖病巣として持つ大臼歯を、嚢胞摘出後、意図的再植術により治癒させました。この当時は歯根膜は感染源となるので、大部分を除去し、ガッタパーチャポイントのみで根充したりしていました。感染源の除去と根尖の封鎖はある程度できたのですが、やはり、アンキローシスが起こります。当時Andreasenにより移植や再植が、広く臨床家の間に広まっていったのを、よく覚えています。この論文は歯科臨床における、生体の不思議さと治癒能力について私に大きな示唆を与えてくれました。またインプラントだけが「形成歯科」ではなく、このような保存的な治療を有効に使っていくことこそ重要なのだ気づかせてくれました。

最近は歯科用CTやマイクロスコープの使用により、再植術もさらに確実性が上がったと思います。コーンビームCTにより病巣の形、歯牙の形を正確に把握し、骨モデルも作成することにより3次元的な治療計画を立てられます。また術中にマイクロスコープによる観察を行い、根尖の吸収状態の確認や、歯根膜を残す範囲の決定ができます。そして根尖の封鎖はスーパーボンドで、接着により確実に行っています。さらにエムドゲインを塗布することにより、より歯根膜の再生を確実にし、アンキローシスを防ぎ、歯牙として正常な歯槽骨との結合を維持できると考えています。

2宮本のう胞.jpg


最近の症例ですが、難治性の大きな根管病巣を伴った歯牙(5番)に、上記のような方法で意図的再植術を行ったものです。根尖病巣が改善し、上顎洞粘膜の肥厚も劇的に改善しました。同様に破折歯の再植なども行っており、歯牙の保存の可能性をさらに広げていきたいと考えています。

和田義行・和田歯科クリニック・札幌市南区藤野(日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

公益社団法人 日本口腔インプラント学会について

インプラントコラム / 2014.05.23

私が所属する学会の中で一番重要なのは日本口腔インプラント学会です。この学会は研究会やスタディーグループではなく、日本歯科医学会の専門分科会である、いわゆる公式にみとめられた学会です。私は大学卒業以来、20年以上にわたって、この学会に参加してきました。

 この20年間、歯科インプラントは激動の時代でした。毎年学会に行くたびに、新しい臨床技術、材料、そしてコンセプトが目まぐるしく現れ、胸が高鳴りました。ざっと振り返ると、ブレードインプラントによる最初のインプラントの臨床家への普及オッセオインテグレーションの発見表面性状の追及骨造成法の確立CAD/CAMによる補綴材料の変化ガイデッドサージェリープラットホームスイッチングによるインプラント形状の変化、といったところです。この30年にインプラント治療はかなり確立され、最近は驚くようなコンセプトは少なくなりました。しかしこれは新しいことがなくなったということではなく、成熟の時代に入ったということです。インプラントは確実に行えば、かなりの高い確率で、成功し患者に満足を与えることができる治療です。これは現在日本口腔インプラント学会が13000人を超える会員を誇り、さらに増加し続けていることからも明らかでしょう。現在、学会では、治療倫理の問題や、インプラント周囲炎などに多くの時間が割かれています。これも時代の流れですが、20年以上にわたってインプラント変遷を見てきた、我々はもう一度自分の治療を見直すときでしょう。現在のインプラント学会が掲げる「安心・安全・確実なインプラント治療」こそ私たちの目指すインプラント治療です。

現在の日本インプラント学会は、学会誌の論文、学会発表ともに大学主導の感が強く、一般の臨床家にとっては、追随するいくのが難しいものが多いと思います。学会の中で臨床家が多くを占める中で、もっと臨床家が興味を持てる内容も必要と思います。その一方で臨床家はもっと基礎研究などをもっと勉強し、その内容を臨床にフィードバックできるような知識を身に着けるべきと思います。研究者も臨床家もどちらかに偏っていては議論にもなりません。あくまでも基礎研究を通して、歯科臨床に生かしていくのがインプラント学会の役割だと思います。そんな中で。歯科臨床と基礎研究の両方にかかわってきた、私が貢献できればと考えています。

和田義行 和田歯科クリニック 札幌市南区藤野 (日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

和田義行のインプラント論文Review③

インプラントコラム / 2014.05.21

 インプラント義歯に磁性アタッチメントを用いた3症例の検討

A clinical study of the cases that used magnetic attachment for implant overdenture.

和田義行、日本顎咬合学会誌 第28巻、第1・2合併号、64-71,2008.

私は歯科医師として臨床を行いながら、大学で基礎研究も行ってきました。しかしもちろん本職は歯科臨床です。というよりも歯科臨床を検証し発展させる手段として基礎研究を行っているわけです。そこで多くの臨床論文も書いています。この論文はインプラント・オーバーデンチャー (implant-supported overdenture)の適応についてその当時、従来と少し違った視点で考え報告した論文です。

症例1 上下顎の対向関係に大きなディスクレパンシーがある場合、破折への対応(特にシングルデ       ンチャー時)、フルクラムラインを考慮したインプラントの配置

症例2 残存歯支台とインプラント支台の共存、

症例3 ショートインプラントを用いた、パーシャルデンチャーによる歯冠歯根比の改善

などについて検討しました。また、インプラントオーバーデンチャーによる相対的咬合力の改善が、Tスキャン2により計測されました。この論文において考察した内容については、いまでも変りはありません。しかし最近出てきた、ロケーターアタッチメントなどは、実際に使用してみて優れたものだと思います。磁性アタッチメントはとても使いやすのですが、維持の点での改善が期待されます。また固定式の補綴物か可撤式の補綴物かは、患者さんの好みに大きく左右されます。特に今まで可撤式の補綴物を使用してきた患者さんに、固定式の補綴物への変更を行う場合は十分な審査に基づくことが必要だと思います。インプラントオーバーデンチャーは患者の欠損状態、好み、に応じてさまざまなバリエーションが考えらえれます。あまり形式にとらわれずに設計を考えるには、それなりの経験が必要です。現在、下顎無歯顎の補綴はインプラントオーバーデンチャーが第一選択である、と最新のコンセンサスではなっているようです。しかし、その前によくできた義歯が必要であることはいうまでもありません。

和田義行 和田歯科クリニック 札幌市南区藤野 (日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

和田義行のインプラント論文Review②

インプラントコラム / 2014.05.18

Electrophoretic gels of dentin matrix proteins as diffusion media for in vitro mineralization. 

Wada Y, Fujisawa R, Nodasaka Y and Kuboki Y.:  J. Dent. Res; 75(6): 1381-1387, 1996.

最近エムドゲイン(Emdogain,Enamel Matrix Derivative)をソケットプリザベーションに用いるケースがありますが、骨補填材のみよりも、より石灰化が進むのではないかと考えています。インプラント埋入の際に非常に良質な硬い骨が形成されていて、GBRなどの骨造成が不要になることが多いようです。これはエムドゲインのなかにあるかもしれない成長因子が、骨形成を細胞レベルで促進している(Wada Y et al. J Periodontol. 2008)という可能性に加えて、もしかしてエナメルタンパクの石灰化促進作用もあるのではないかと考えています。まあエムドゲインについては後程、解説したいことがたくさんあるので、今回は私の学位論文についてです。

この当時、試験管内石灰化を研究する手法として、溶液内、ゲル内で実験する系がありました。この実験はポリアクリルアミドゲルで蛋白質を電気泳動し分離すると同時に、自然拡散、または電気的にカルシウムイオン、リン酸イオンをゲル内で結合させ、できたリン酸カルシウムを染色するという画期的なものです。この実験で、骨や象牙質の抽出タンパク質の中から、石灰化の関与する蛋白質を簡単迅速に検出することが可能となりました。そしてさらにオステオカルシンのGla基を脱カルボキシル化すること、象牙質ホスホホリンのリン酸基を脱リン酸化することで、これらの非コラーゲン蛋白の石灰化に対するメカニズムを世界で初めて解明しました。

この論文は、歯科の論文で世界最高の雑誌である、The Journal of Dental Research (JDR)にアクセプトされました。今、読み直してみても、まだまだ可能性のある実験系だと思うのです。またこの方法でできた石灰化物は主にTCPであり、コラーゲンや非コラーゲン蛋白とにより修飾されながら形成されているので、理想的な骨補填材を作ることも可能かもしれません。そして先ほどのエムドゲインのソケットプリザベーションの話ですが、この実験ではホスホホリンは強力な石灰化促進作用を示しました。同様にエナメル蛋白は、さらに固いエナメル質を形成しますから、強力な石灰化を起こすことにより、骨の形成や成熟に有利に働くかもしれません。数年前からエムドゲインをこの石灰化実験系に用いて研究しようと考えてきましたが、いまだに実現していません...

和田義行 和田歯科クリニック 札幌市南区藤野 (日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

歯学生に口腔生化学をどう教えるか?

インプラントコラム / 2014.05.16

先日、私の母校北海道大学歯学部にて、口腔分子生化学教室の非常勤講師として講義を行いました。対象は2年生で、まだ歯のことはほとんど習っていません。私が学生の時も口腔生化学が歯科に必要とは理解できず、まったく講義を受けた記憶がありませんでした。たとえば講義のカリキュラムには「細胞、DNA,分子、原子」などの項目が並び、なかなか2年生には敷居が高そうです。

 自分がかつて学生だったら、このように教わりたかったなと思う講義とは、歯科臨床と完全にシンクロした講義です。生化学をはじめとした、基礎科目(口腔生化学、口腔解剖学、口腔病理学、歯科薬理学、歯科理工学など)が重要なことを知っている歯科医師は多いと思われますが、その内容を理解して、それを歯科臨床にフィードバックすることは大変難しいことです。私はこの20年まさにそれを求めて、研究と臨床を行ってきました。(それは専門医指導医を取得することにも役立ちました)

学生に基礎科目を理解してもらうためには、インプラント治療は非常に役に立ちます。なぜならインプラント治療は総合歯科であり、そのメカニズム(オッセオインテグレーション)も、その治療法(骨造成など)もきわめて基礎研究的な考えが用いられているからです。実際の講義ではインプラントを埋入するVTRや再生治療(エムドゲイン、メンブレン)を伴った歯周治療、保存治療をのVTRを見せながら、歯科治療→歯、骨、歯肉、歯根膜とは何か?→骨芽細胞、象牙芽細胞、歯根膜細胞→DNA,RNA,たんぱく質といった流れを簡単に説明します。もちろん今の段階で理解することはほとんど不可能ですが、基礎を単独で、学ぶよりはずっと意義のあることと思います。将来、歯科医師になった時に、歯科を学問としても勉強していくと楽しく臨床ができます。少しでも学生に興味を持ってもらえたらと思います。しかし実際、一番興味のあったのは歯科の経済学だったようです。その内容は書きませんが...

和田義行 和田歯科クリニック 札幌市南区藤野(日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)