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和田義行のインプラント論文Review⑪part 2

インプラントコラム / 2015.05.22

Wada Y, Mizuno M, Nodasaka Y, Tamura M. The effect of enamel matrix derivative on spreading, proliferation and differentiation of osteoblasts cultured on zirconia. Int J Oral Maxilloac Implants. 27: 849-858,2012. 

続き)

結果はジルコニアディスク上でも骨芽細胞は良好に増殖し、分化することができました。この時点でジルコニアのインプラントに将来性があることはよく理解できました。ところがEMDを塗布したディスクは細胞の接着があまり良好ではありませんでした。我々はこれについてEMDの塗布方法に問題があるのではないかと考察しました。歯の根面にEMDを塗布する場合は直接ゲルを塗布しますが、インプラントに使用する場合はその適用に考慮が必要かもしれません。特に濃度が重要なのではないかと考えています。もしEMDの本質が成長因子であれば、あまり高濃度はよくないかもしれませんね。つまりインプラントにはゲルのintactなまま使用するのではなく、生食などで希釈することが必要かもしれないということです。

 ②骨造成と生化学final(ITIスタディークラブ)jpeg.jpg

この論文の査読もかなり長くかかりました。いくつか再実験を要求されました。困ったのは表面性状を表すSaなどの試験で、その方面にはつてが無かったので、関東のある試験場を探して依頼して図表を作りました。ぜひpubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmedQuintessence(http://www.quintpub.com/


のサイトからこの論文を読んでいただければと思います!

いずれにしてもインプラント周囲に骨を作る方法は、従来行われていた方法、いわゆる骨造成(GBRなど)だけでなくEMDをはじめとして、様々な方法が考えられると思います。それには発想の転換が必要です。

そうこうしている間に、以前に国際誌に投稿していた論文(ケースレポート)が受理されました。実はこの症例報告はまさに大きな発想の転換の症例なのです。今度は基礎研究ではなく完全な歯科臨床、インプラントの症例報告です。おそらく皆様にも興味を持っていただけると思います。近々ご紹介しようと思います。

和田義行・和田歯科クリニック・札幌市南区藤野(日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

和田義行のインプラント論文Review⑪part 1

インプラントコラム / 2015.01.05

Wada Y, Mizuno M, Nodasaka Y, Tamura M. The effect of enamel matrix derivative on spreading, proliferation and differentiation of osteoblasts cultured on zirconia. Int J Oral Maxilloac Implants. 27: 849-858,2012.

あけましておめでとうございます。

今回の論文は私の臨床と研究の集大成です。なぜかというと、私は卒業以来、臨床家としてはインプラント治療に重点を置いてきましたが、一方で、研究者としてもある一定の成果を上げてきたと思います。しかし私は臨床家として、大学人とは全く違う視点で、研究を行いたいと考えてきました。またそれは私にしかできないと考えてきました。私は前述のとおり現在のインプラントにおける骨造成法に疑問を抱いてきました。何とかしてもっと簡単に臨床に使える方法を開発したかったのです。そしてこの研究はInternational Journal of Oral and Maxillofacial Implants(JOMI)というインプラント臨床の最高の雑誌に掲載されました、

タイトルを見てわかるとおり、これはエムドゲインとインプラントというちょっと荒唐無稽な組み合わせのものです。以前の研究で、せっかくEMDについてはかなり研究を進めることができたので、これをインプラントに使えないかということを考えました。しかしご存じのとおり、EMDは歯周組織を再生するものであり、インプラントに使うのは「?」なのです。実際EMDをインプラントに用いた実験はin vivoでもin vitroでもほとんど報告されていないのです!(世界中で!)しかもその結果はどちらかというとネガティブなものでした。しかし我々はこれまでの研究で、EMDが骨芽細胞にpositiveに働くことに加えて、そのメカニズムも見つけたのです。

実験はチタンのディスク上で行いました。しかしそれだけではちょっと面白くないので、近年開発が進んできた、ジルコニアインプラントのモデルも作ることにしました。というのは当時CAD/CAMのブロックがかなり普及しはじめていて、その円柱状のものがディスクを作るのに最適で、しかもそれが骨芽細胞培養を行うディッシュのサイズにもぴったりだったのです!加工は技工士さんにお願いしました。まさに臨床家の発想です。

(続く・・・・・・)北医研発表 finalディスクの図.jpg

和田義行・和田歯科クリニック・札幌市南区藤野(日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

日本口腔インプラント学会総会、東北北海道支部総会

インプラントコラム / 2014.12.06

9月、11月と続けて、日本口腔インプラント学会総会(東京)、東北北海道支部総会(山形)が行われました。北海道形成歯科研究会からも多くの若手の発表があり、私も大いに勉強になりました。総会では一般講演の座長、地方会では専門歯科衛生士教育講座の座長があり、ほかの発表を見るのが大変でしたが、やはり近年の学会の傾向どおり、新しい治療法というよりは、安全・安心・確実なインプラント治療に重点がおかれた学会でした。

今までの、臨床研究、基礎研究に基づいたデータから、一番うまくいく方法を選択する治療が求められていると思われます。

和田義行・和田歯科クリニック・札幌市南区藤野(日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

和田義行のインプラント論文Review⑩

インプラントコラム / 2014.08.25

Wada Y, Mizuno M, Tamura M.

Enamel matrix derivative neutralized the effect of lipopolysaccharide on osteoprotegerin and receptor activator of nuclear factor kappa B ligand expression of osteoblasts.

Arch Oral Biol. 2009; 54;306-312.

前回のJournal of Periodontologyの論文を書いたり,査読したりしている間にちょっと実験しようということで、かなり軽いノリで?行った実験です。

エムドゲイン(EMD)が成長因子であれば、EMDが歯周組織の再生を行うときにおこるさまざまな現象が、それによって説明できることになります。そのうちの一つが歯槽骨の再生です。骨ができることが促進されるのであれば、骨を維持することにもEMDは有利に働いているかもしれません。その際に,簡単に言うとRANKL(Receptor Activator of Nuclear factor Kappa B Ligand)は破骨細胞を活性化し骨吸収を促進し、OPG(Osteoprotegerin)はこれに拮抗します。(もちろん実際はそんなに簡単に一言で説明できるものではありません!!BlogRANKLOPG.jpg

この実験は単にRANKLとOPGのELISAを買って測り、PCRをしましたというだけの実験です。私は時間がありませんので、カタログを見て測れるものを選んで実験したといったほうがいいかもしれません!。しかも最後は、今一つのデータをOPG/RANKL比をとることで強引に結論を導いてしまいました・・・。しかし当時、EMDとRANKL・OPGに注目した論文はすくなかったので、意外にもArchives of Oral Biologyというイギリスの結構いい雑誌にアクセプトされました。

今振り返るとお手軽な実験ですが、考え方は間違っていなかったと思います。明らかにEMDはRANKLの発現には影響を与えていると思います。できれば共培養を用いた実験などで、さらに進んだ実験ができると面白かったのですがそこまでの余力はありませんでした・・・・。やはりインプラントをからめた実験に進みたかったのです。

和田義行・和田歯科クリニック・札幌市南区藤野(日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

和田義行のインプラント論文Review⑨

インプラントコラム / 2014.08.18

Wada Y, Yamamoto H, Nanbu S, Mizuno M and Tamura M.               

The suppressive effect of enamel matrix derivative on osteoblastic differentiation is neutralized by an antibody against TGF-β. J Periodontol. 2008; 79:341-347

この論文は私にとって生涯忘れられない、大げさに言えば人生を変えた論文です。この論文がなければ、その後の私の歯科学に関する考え方も違ったものになったかもしれません。この論文のポイントはエムドゲインとは何か?というものです。

エムドゲイン(EMD)はもともと歯胚の発生において、エナメルタンパクが歯周組織を誘導するという理論によって、歯周病で失われた歯周組織を再生するというコンセプトで生まれました。そして一般的にはそのように認識されてきました。しかし近年、歯胚(またはその周囲組織?)に含まれる成長因子様のある因子が作用しているのではないかという、ことが提唱されてきました。そしてその候補として、BMP,TGF-βなどが挙げられていました。

この実験はEMD中のTGF-βの存在をかなりシンプルな方法でほぼ証明した論文です。自分で言うのもなんですがかなりよくできた論文です。それは実験方法が素晴らしいとかそういうことではなくて、私にとっては論理的にとてもよく構成されている論文だと思うからです。それは私の上司のM先生に教わったところが大きいのですが、その後の私の論文作成に大きな影響を与えました。「論文とは論の文である」ということを当たり前ですが認識したのです。論文は作文や随筆とは違います。自分の思った意見を述べるとか、ただ起こったことを描写するとかそういうことではありません。

まず我々は最初にエムドゲインは成長因子ではないか?という仮説を立てました。この仮説が重要で、これがなかったり、その立て方が間違っていたりするとその実験はろくなことになりません。(ただし仮説が正しいことがすごく重要なわけではありません。その仮説を立てるまでにいろいろな予備実験があるのです)そしてその仮説を証明するためにはどのような実験が必要かを、参考文献で調べながら進んでいくのです。

まず我々はエムドゲインを可溶性因子(成長因子)と不溶性因子(アメロゲニンなど?)に分離することを試みました。これはちょっと考えが甘くてあまり意味のないものだったのですが、この二つを別々に考えることはこの研究に大きな示唆を与えてくれました。

エムドゲインと骨芽細胞.jpgのサムネイル画像

この実験ではMC3T3-E1細胞という非常によく用いられる、マウスの株化された骨芽細胞様細胞を用いました。そしてEMDが長期的にオステオカルシン(OCN)のmRNA発現、蛋白発現、石灰化を抑制することがわかりました。この時点でほかの以前の論文と結果が異なっていたのですが、条件などの違いと判断し、さらにRUNX2、オステオポンチンなどの短期発現に対するEMDの影響を調べそれが単離されたTGF-βの作用に酷似していることを確認しました。しかし作用の仕方が似ているというそれだけでEMDの作用がTGF-β抗体によるものであるとは言えません。

そこで中和実験(neutralization)を行いました。つまりEMDのOCN発現抑制作用がTGF-β抗体によって変化するかを調べました。この実験は条件設定が難しく、何度か実験を行いましたが、その結果は見事に、EMDの作用はTGF-β抗体を加えることにより消失しました。つまりEMDのOCN発現に対する作用はTGF-βが関与していることが証明できたのです。この方法はとてもシンプルに事実を示しています。しかし骨芽細胞自体もTGF-βを分泌するためこのautocrine作用をブロックしたとも考えられるので、必ずしもEMDのなかにTGF-βが含まれているとまでは断言できないかもしれません。しかしEMDの作用に成長因子が関与するかどうかについては、確実に論争に終止符が打てる歴史的な結論だったと思います。

この最後のRT-PCRの結果が出たのはある真夜中のことで、ひとりで祝杯をあげました。この時点でquality paperになるだろうということは確信できましたが、それ以上にエキサイティングだったのは、論文の制作過程でした。次々に論理を組み立てていく過程は推理小説で探偵が犯人を追いつめるのに似ています。さまざまな証拠を積み上げて実証するのです。この論文は歯周病学の最高峰であるJournal of Periodontologyに掲載されました。ぜひ一度この論文のDISCUSSIONを読んでいただければと思います。そしてこの論文が論理的によくできているかを見ていただければと思います。(実際にはアクセプトされるにはreviewerから再実験の要請もあり、かなりの時間がかかりました。その話はまた改めて...)

エムドゲインの作用は.jpg和田義行・和田歯科クリニック・北海道札幌市南区藤野                               (日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)