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和田義行のインプラント論文Review⑧

インプラントコラム / 2014.08.01

吉村治範、和田義行、黒江敏史、関口隆、三上格、

インプラントと皮質骨ブロック移植症例の長期経過観察、Long-term observation of a cortical bone block graft case for implant treatment.

日本顎咬合学会誌 第30巻、第1・2合併号、34-41,2010.

前回の続きで骨造成です。インプラント埋入のために皮質骨ブロックを衣装くした症例の7年後をコーンビームCTで観察しました。もちろんインプラント自体の予後には全く問題なく経過しています。

皮質骨ブロック.jpg

このスライドからわかるのは、移植した皮質骨は七年後にも明らかに周りの骨とは異なっているということです。はたしてこの骨は生きているのでしょうか?そしてこの骨は将来リモデリングして、周囲の骨と一体になるのでしょうか?このケースレポートで、惜しむらくは施術当時、コーンビームCTが普及していなくて、正確に移植骨のどの部分が現在どこにあたるのか正確に判定できなかったことです。

私はこの皮質骨ブロックは骨補填材と同じと考えています。移植直後にはおそらく死んだ骨であり、生きた細胞もいないし、血管もありません。(吻合などしていなければ)この石灰化度の高い皮質骨に血管が入り込むのは容易なことではありません。ですから一部は死んだ骨(骨補填材)、一部には血管が入りハイブリッド状態と考えています。そして死んだ骨がそのまま残っていてもインプラントの予後がいいのは補填材の場合と同じでしょう。

また血管を早く中に入れたいのであれば、移植骨にたくさん孔を開けることでしょう。しかし早期に血管が入ると、顆粒骨を使用した場合のように、急速に骨吸収が起こるかもしれませんね。血液由来の細胞はマクロファージや破骨細胞に分化してくるかもしれません。ですからこのような治療を行うときは、どのような結果がほしいのかをよく考えて術式を決定しなければなりません。インプラントを支え、歯肉を維持したいのか?それとも骨がなければならないのか?本物の骨を作り維持するのは、現時点では容易なことではありません。

これからこのような移植骨の長期予後をコーンビームCTで評価したものが続々と論文で出てくると思われます。(我々も現在症例数を多くして検討中です)そうすると次世代の新しい骨造成法が出てくると思われます。

和田義行・和田歯科クリニック・北海道札幌市南区藤野                               (日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

和田義行のインプラント論文Review⑦

インプラントコラム / 2014.07.10

Wada Y, Nanbu S, Yamamoto H, Mizuno M and Matsuzawa K: Different cell

situations influenced osteoblastic responses to calcium phosphate particles. J.

Jpn. Soc. Oral Implant. 18(3): 394-405, 2005.

骨造成がインプラント治療において普通に行われるようになって、かれこれ20年くらいでしょうか?今回は骨造成について私見を述べます。結論から言うと、現在行われているGBRのような方法では骨を作ることはほとんどできません。講演会などで、なぜ普通に骨を作りましたとか言っているのかさっぱり理解できません。基本的には骨のないところには骨ができないのが当たり前なのです。

そのような講演会では、よくリエントリーの写真やCT像などがよく出てきますが私から見て骨ができていると思われるものはほとんど(まったく?)ありません。もしできていると思われる場合は要するに骨が修復しているのであって、補填材が骨を作ったのではないのです。要するにできるところにしか骨はできないのが生化学的に当たり前なのです。そのせいか基礎の研究者はあまりそういうことには興味がありません。

そして、できたとしても作った骨はすぐなくなります。これはインプラント関係の論文でもたくさん報告されていますよね。これも生化学者は常識として知っています。BMPの異所性骨形成の実験では,できた骨は数か月でなくなります。あと動物実験と人間の違いもあまりに大きいです。

それどころか、私が初めて細胞培養を行ったこの論文ではHAをはじめとした様々なリン酸カルシウムと骨芽細胞の相性を調べましたが、それらは必ずしも細胞にいいものとは思えませんでした。顕微鏡をのぞくとむしろ細胞を傷害しているようにさえ感じました。少なくとも細胞増殖は抑えられます。それを細胞分化を促進しているととらえる論文もありますが...。

細胞の状態が骨芽細胞の.jpg

しかし、これは臨床における骨補填材の有用性を否定しているわけではありません。私も臨床ではしばしば骨補填材を使用して良好な結果を得ています。しかし実際にはそれはセメントのような使い方であって、骨と補填材が混ざったハイブリッド材料のようなもので、それで、インプラント支持できたり、歯肉を安定させてインプラントが露出しないようにしているのです。よって臨床的には骨補填材は非常に役に立っています。

もちろん最近のES細胞、IPS細胞、STAP細胞(?)をはじめとした再生療法は、将来、正真正銘の骨を作り、インプラント治療にも役立つと思われます。またしばしば未来の治療として語られる、歯胚のデリバリーといったこともあるかもしれません。しかしそれはまだかなり先の話です。もしできたとしても料金は現在のインプラント治療の20倍以上はかかるかな?

現在考えられる、理想的な骨造成法として歯牙移動を利用したものを考えています。やはり自分の体に作らせるのが一番理想的です。しかしこれについても突き詰めて考えるといろいろと興味深いことが出てきます。この話題に関しては近々報告できればと思います。

和田義行・和田歯科クリニック・北海道札幌市南区藤野                               (日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

和田義行のインプラント論文Review⑥

インプラントコラム / 2014.06.16

Changes of the rat dentin matrix proteins affected by long-term administration of

 Hydroxyethylidene-1, 1-bisphosphonate (HEBP)

Wada Y, Fujisawa R and Kuboki Y.Jpn. J Oral. Biol, 45:428-436, 2003.

数年前から歯科界では、ビスホスホネート(BP)の話題で持ちきりでした。ビスホスホネートは骨粗鬆症の治療薬として、整形分野などで広く使われています。この薬は、カルシウムイオンのキレート作用により、骨に沈着します。そして骨を吸収する破骨細胞に取り込まれ、骨吸収を抑制する働きがあるといわれています。この薬を長年投与されていると、骨にビスホスホネートが蓄積し、歯を抜歯したり、骨への侵襲があった時に骨の壊死が起こる危険性があるといわれています(BRONJ)。このことは皆さんもよくご存じと思います。

 この論文はHEBPというビスホスホネートの作用を調べたものですが、骨に対する作用ではありません。実は象牙質に対する作用なのです。大変興味深いので、紹介しようと思います。前に紹介したように、私は北大口腔生化学教室で試験管内石灰化の研究を行い、Journal of Dental Research(JDR)に論文を発表し学位を取得しました。その後、このままin vitroの石灰化実験を行おうかとも思いましたが、新しく薬剤を用いたin vivoの実験を行うことにしました。

 その実験は、ラットの皮下にビスホスホネート(BP)を注射し、象牙質の石灰化に対する影響を観察するというものでした。ラットにBPを投与すると、驚いたことに象牙質が石灰化しなくなるのです。つまり歯がフニャフニャになります!。このメカニズムを調べようというわけです。もちろん象牙質においてもカルシウムイオンのキレートにより石灰化が影響される可能性があるのですが、それだけでなく、象牙芽細胞にもBPが作用しているということが当時わかってきていました。スライド1hebp.JPGのサムネイル画像

 この実験の結論は、この石灰化の抑制が起こる原因は象牙芽細胞のdentin phosphophoryn(DPP)の産生の変化によるのではないか、というものです。これはBP投与後のラットから象牙質を摘出してクロマトグラフィーでDPPを測定しました。DPPは象牙質で最も量の多い非コラーゲン蛋白です。ラットから歯牙を摘出するときに、柔らくなった象牙質を見て驚いたものです。ラットの象牙質は一生伸び続けるのでこのような実験ができるのですが、ヒトの歯での研究はあまり進んでいないようです。しかしヒトでもBPにより象牙質の形成に何らかの変化が起きていることは間違いないと思われます。

先日、北海道形成歯科研究会のシンポジウム後、ある先生と石灰化についてのディスカッションになり、また最近の石灰化の研究を調べたくなりました。どこまでいっても興味は尽きません。

和田義行・和田歯科クリニック・北海道札幌市南区藤野                               (日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

和田義行のインプラント論文Review⑤

インプラントコラム / 2014.06.05

ダウン症候群患者の上顎前歯部にインプラント治療を行った1症例、

吉村治範、和田義行、黒江敏史、三上格、関口隆、

日本口腔インプラント学会誌、2011

 今回の論文は2011年に日本口腔インプラント学会誌に出した、ケースレポートです。論文や発表をすることは、単に一つの症例や研究を完結することとは次元が違います。特に論文はただ発表するだけのケースプレゼンテーションとはまた次元が違い、それを仕上げることにより、知識、背景、問題点、将来性を理解することができ、おそらくその症例について、世界のだれよりも知ることになります。

私は歯科業界でよく使われる、「いい症例」「素晴らしい症例」という言葉が嫌いです。症例に良いも悪いもありません。ましてや患者さんにとっても何の意味もありません。どんな症例でも全力を尽くして、考え、診断をして、治療後、徹底的に考察をすることしかないのではないでしょうか?そして、そうすると自然に優れたケースレポートは出来上がってくるのです。

ケースレポートは、本来、珍しい症例や、変わった治療法をトライしてみるとかそういう考え方で出来上がるものではないと思います。一見普通の症例でも、事前によく考え、診断し、術後に徹底的に評価することで、浮かび上がってくるものが必ずあります。そしてそれには優れた先人の考察も必要です。いわゆる参考文献(references)です。もしそのような考察が、どんな症例においてもなければ、実はその症例について、何も理解してはいないのです。

当初、吉村先生とこの論文に取り組んだ時には、私はこのような症例について知識が少なく、この症例がいかに多くのディスカッションを含んでいるかを理解していませんでした。しかしいろいろと調べていくうちに多くのことがわかってきました。。まず驚いたのは、ダウン症候群におけるインプラント治療の報告の少なさでした。世界的に見てもこのような症例報告は少なく、これからインプラント治療を受けようとする患者さんに、多くの利益を生み出すだろうと思われました。(結果的にはこの論文は国際誌に出しても十分通用したと思います)

そして、論文の査読者とのやり取りからも、多くの知見と示唆が得られました。そしてこのような治療を行うにあたっての注意点を十分に検討し、再度考察し直しました。それはインプラント治療だけにとどまらず、歯科治療全般について、そして親や、デンタルスタッフをはじめとした医療従事者、などすべてを取り込んだ考察へと発展していきました。この論文はそのことにより、これからこのようなインプラント治療を行う術者にとって、貴重な資料となると思います。私は査読者とのやり取りが結構好きで、エキサイティングな示唆を与えてくれる査読者だと、論文を直すのも楽しいです。その反面、本質を外れた査読もたまに遭遇することがあり、その時は腹立たしさとともに、ちょっと残念な時があります。いずれにしても、一般的には論文の査読とは恐れるものではなく、自分に多くの示唆を与えてくれるものだと認識したほうがいいでしょう。いずれにしても、この論文は、この症例に限らず、すべての治療において、貴重なケースレポートを作成できることを私に確信させてくれました。

和田義行・和田歯科クリニック・札幌市南区藤野(日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)

エムドゲインはなぜ「効く」か?北海道形成歯科研究会News Letter2009より

インプラントコラム / 2014.05.29

(北海道形成歯科研究会News Letter2009より)

スライド1.JPG

 皆さんはエムドゲインをご存じですね。Emdogainは商品名であり、一般名としてはenamel matrix derivative (EMD)と呼ばれています。ブタの幼若歯胚から抽出されたタンパク質ということです。現在日本ではヨシダ、生化学工業、で輸入販売されていますが、海外ではインプラントのストローマン社です。歯周病治療における再生療法に使用されるものですが、実はなぜ効くのかは正確に分かっているわけではありません。(と私は思います)

ここでエムドゲインを使用した、2つの素晴らしい症例を提示します。どちらも見事に歯周組織の再生が見られますね。スライド2.JPG

エムドゲインの作用機序は歯牙の発生に深く関与しています。というよりも歯牙の発生において、「エナメル蛋白が歯周組織の再生を誘導する」という発想からエムドゲインが開発されたといえます。

さて、ここで面倒ですが学生時代に学んだ歯の発生を思い出しましょう。ただし全部だと眠くなるので、関係のあるところだけを説明します。

ヘルトビッヒの上皮鞘(覚えてますか?)このエナメル上皮細胞から分泌されたあるタンパク質(アメロゲニン?)が歯周組織(セメント質、固有歯槽骨、歯根膜)の発生へとつながります。このエナメルタンパクがエムドゲインの本質とされています。ですから、エムドゲインを歯周治療後の根面に塗布することにより歯周組織の再生が促進されるわけです。しかしここまでは、あくまでも発生の理論をそのままあてはめただけであって、実際にエナメル蛋白が歯周病によって破壊された(発生段階でない)歯周組織を再生するかどうかは、別な問題です。  

私が、この問題に興味を持ったのは、骨芽細胞のバイオマテリアルに対する反応に興味を持ち、TCP,アパタイトなどの無機材料に対する実験を培養系でしていたときでした。たまたま、私の上司の水野先生が、「エムドゲインというのが冷蔵庫に余っているから勝手に使っていいぞ」というので、「どれどれこれがエムドゲインか。無機材料は実験に使いにくいが、これなら培地に溶かして使えるし、やりやすそうだ」と考え、文献を調べ始めたのがきっかけでした。エムドゲインは細胞に何か働くようだ、と水野先生に相談すると、ああそれは成長因子だろう、と。なぜなら歯胚にBMP,TGF-βなどの成長因子のmRNAが発現していることは、多数報告されているからです。スライド5.JPGつまり、ここでエムドゲインの本質の候補は エナメル蛋白 ②成長因子(BMP,TGF-β)が考えられるわけです。(図4)しかしエナメル蛋白(アメロゲニン)に関する論文は非常に少なく、その細胞への影響は不明です。スライド4.JPG

実験を始めると、どうもいままでの報告とは違う結果が出てきます。たとえばエムドゲインは骨芽細胞の分化を促進すると報告されていましたが、私の実験系では、逆の結果になり、最初は実験方法の問題か、と考えましたが、これは成長因子の多様性を表していたようです。TGF-β抗体(高い!)を使った実験がうまくいった時には、大変感動したのを、覚えています。確か夜の12時頃のことでしたのでよく覚えています。我々はエムドゲインの作用にTGF-βが何らかの関与をしていることを証明しました。(Wada et al. 2008)

 続いて、我々はエムドゲインが歯周病の原因の一つである、LPS(菌体外毒素、リポ多糖)のosteoprotegerion (OPG) receptor activator of nuclear factor kappa B ligand (RANKL) に対する作用を中和することを突き止めました。OPG/RANKL系は破骨細胞の分化をコントロールすることにより、歯周病における骨吸収に深く関与しています。このことはエムドゲインが臨床的な効果を持つことを証明するとともに、成長因子の関与も示唆していると考えています。(Wada et al. 2009)

結論として我々は

「エムドゲインはエナメル蛋白に混在する成長因子を介して、骨芽細胞の増殖を促進し、分化をコントロールすることにより歯周組織の再生を促進する。またOPG/RANKL系を制御することにより骨代謝を改善する。」

と考えています。スライド6.JPG

 現在ジルコニア上での骨芽細胞の培養を始めました。インプラント材としてのジルコニアに何かプラスになる方法を見つけられればと思っていますが道のりは長そうです。

余談ですが、研究に携わっていると、「evidence based」という言葉は非常に危険だと思います。特に臨床において、こういう論文があるからこのような処置をしたと、よく雑誌に書いていますが、過去にいくつものことが数年で否定されています。(ハッキリ言って論文はそんなに信頼できるものではありません!)特に統計的なデータだけに頼ることはless treatment, overtreatmentを引き起こすと思います。結局のところ臨床でも、経験というものももっと重視し、自分自身でよく考えること重要だと思います。

北海道形成歯科研究会においても、ベテランの先生方の発信する情報に耳を傾け、一人一人が責任を持って思考し、インプラント治療を行うことが正しい方法と思います。ですから、北海道形成歯科研究会の集まり(飲み会)に参加して、生の情報を獲得しましょう。そこに真実がきっとあります。

参考文献

歯周組織再生とエナメルタンパク、深江允・石川烈・内田隆・矢嶋俊彦 編 2002年、永末書店

エムドゲインを用いた再生療法の基礎と臨床、船越栄次 監/D.L.CochranJ.L.Wennstrom・E.Funakoshi・L.にHeijl 著 2005年、クインテッセンス出版

 Wada Y, Yamamoto H, Nanbu S, Mizuno M. and Tamura M. The suppressive effect of enamel matrix derivative on osteoblastic differentiation is neutralized by an antibody against TGF-β. J Periodontol 2008; 79:341-347. 

Wada Y, Mizuno M and Tamura M. Enamel matrix derivative neutralized the effect of lipopolysaccharide on osteoprotegerin and receptor activator of nuclear factor kappa B ligand expression of osteoblasts. Arch Oral Biol 2009; 54:306-312.

和田義行・和田歯科クリニック・札幌市南区藤野(日本口腔インプラント学会・専門医・指導医)